2020年「国見岩周辺環境整備活動」を振り返る



7月に入って沢登り終了後の記念撮影



10月24日 徳永ガイド夫妻を招いて安全登山講習会



11月 29日
懸垂下降時の注意点を説明する川嶋事務局長


国見岩での講習が終了後の記念撮影
 3月末、コロナ禍で遠方への登山・クライミングは自粛となり、それだったら皿倉山国見岩の、昔使っていて今は使っていない為非常に荒れている五つ岩等の岩を、また使えるようにしようという溝尾さんの提案で、ビジターセンターの許可をもらい4月から取り掛かる。どの岩も、雑草と木の根がはびこり土が積もり苔むしている。
 4月は8回、5月は7回活動、6月も活動中で、他会のマップ・嵐・八幡山岳会等の方々の応援もあり徐々に使える様になってきた。また、岩場に行く時の危ない箇所にフィックスロープを張って頂いたり、大木に登って枝を剪定して頂いたりした。気持ち良くクライミングをしてもらいたいとの思いに感謝です。
 岩がきれいになった所から登ってみる。国見岩で、今までクライミングをしていた岩以外にも沢山登れる箇所があることを知る。
 作業している時に往年クライマーから、昔は登山靴で登っていたことや、何十年も前の山岳会が盛んな頃は国見岩もクライマーで賑わっていたこと、昔は今のようにギアがないので今のナッツの代わりに、石に紐を巻いてクラックに挟んでいたこと等々の話を聞くだけでも楽しい。
 国見岩は高さはないものの、五つ岩の一から五までの岩を楽しめ、初心者向けからフェースでのバランスクライミング・スラブ壁でムーブの練習・ジェードル登り・レイバック登り等で、一日遊んで楽しめるし国見岩で充分練習出来ます。
 北九州に皿倉山があって本当に良かったと思う。
 今回の岩清掃とクライミングに数人の女性が参加していて、宇佐の70代女性は国見岩が楽しかったようで今後も来たいそうで、この方のやる気は凄いし、若い女性もまた参加したいとのことで、他会の方とクライミングを通じて知り合うことができ楽しくなってきました。
 国見岩の手入れが終われば、楽しめる国見岩をどうにかしてPRしたいし、老若男女に興味を持ってもらえたらと思います。そしてまたスペシャルなクライミング講習会を国見岩で受けたいと願います。  (文・サト)
女性参加者の感想

 今回の講習はとても楽しみでした、というのも今年は特別に川嶋事務局長の奥様でもおられる大和田英子国際部長がご一緒に来られるとのことで大変心持ちにしていました。 懇親会でご一緒させて頂いたのですが飾らない人柄で、気さくに接して頂き山の色々な楽しみ方を教えて頂けました。
 講演会では事故について深く考えさせられる内容で残された家族の事、そしてどのような思いで救助に向かわれるかをお聞きし これからも必ず無事に帰ることを再認識させられる内容でした。岩場での講習会もあり自分の基礎知識がいかに間違っていたか、目から鱗の内容もアリでとても充実した、そしてまたもっと学ばなければと思う2日間でした。 来年もあるなら是非また参加したいと思います。

 2020年が始まって1月、2月が過ぎていき、コロナの影響が日本中に出始めた3月下旬の頃だった。既にあらゆる活動が停滞する中で、各山岳会に所属する私達にとっても、例年通りの活動を計画することができなくなってきていた。 先行きの不安しかなく、どうしようもない現実の中で、私に一つの閃きがあった。ことさら特別のものではなかったが、何も出来ないまま、このまま無駄に時を過ごしたくない思いと焦りもあったかもしれない。
 3月末に、5月の連休に向けての山行計画を話し合うミーティングを仲間内でした時だった。なんの力みもなかったと思う。 長年にわたって、我々が岩登りのゲレンデとして親しんできた「国見岩の環境整備」を、折角のこの機会だから、やってみたらどうだろう これが、まさに始まりだった。
 何気ない普段の生活をしていると、行動の記録を書き残すこともないが、コロナ感染時の対策として、この半年以上の「生活と行動の記録」を付けていたのも役立った。

 4月に入ると事態は更に深刻化し、実際に第1回目の活動が開始できたのが、4月29日(水) 昭和の日で、5人で活動を始めた時の記録が残っている。
・活動時間 11:00~16:00 参加者:5名
・五つ岩の清掃と試登で、アッという間に時間が経つ
この様にして、5月2日、6日、13日、14日と記録が続いている。
 岩場(ゲレンデ)の周辺の草刈り、苔落としと木々の剪定位なら、素人の集団でも何とかなるかと思っていたが、造園と土木技術の資格を持つ心強い仲間がいて、岩場に影を落とす木々の剪定をしてくれたのも心強かった。更には、岩場に使うボルト類の選別から購入に関しても、 私達には馴染みの薄い特別な資格を有する、古参の仲間が力を発揮してくれて、ボルト類の購入も順調に進めることができた。
 そのボルト類等の必要な備品の購入費用については、日本勤労者山岳連盟(全国連盟)の川嶋事務局長と相談して、岩場の整備活動用の安全対策基金を福岡県連として申請して許可をもらうことができた。 この頃の活動の様子を県連通信に寄稿したのがきっかけで、幸運なことに、川嶋事務局長を招いて、現場視察と「安全登山楽習会」をすることが決まった。

 4月下旬から動き始めた活動が、少しずつ軌道に乗ってきだした。最初は労山所属の会員だけで始めた活動のつもりが、いつの間にか、会の枠を超えて他山岳会からも協力者が出てきだした。地元の岩場で整備活動と練習をしながら、集まった仲間で、北九州市外の岩場(ゲレンデ)にも出かけていくようになっていった。

 5月下旬から6月は、天気にも恵まれて、整備活動とクライミングに熱中することができて、一番楽しかった時期だったと思っている。今でも、岩登りに夢中になっている、その頃の写真を見ると、いつまでも元気で好きなことができる幸せを願うばかりである。

 7月に入って、梅雨の時期を迎えて、雨の日も多くなってきたが、それでも活動意欲は減退することはなかった。雨が降った後でも通い慣れた国見岩に、「夏岩合宿」の訓練山行として、7人で歩荷トレーニングをしたこともあった。また、北九州市(若松区)にある「玄海青年の家」で、何回もインドアクライミング練習や技術講習会をしたのも懐かしい (7月11日、13名参加)。 梅雨が明けると、本格的な暑さの中、内住峡の沢登りにも大勢の仲間(12名)で出かけている。各種活動に、皆が結集できていた貴重な時期だったと思う。

 8月30日(日) 8月最後の週末に、総計20名の参加者が集まって、国見岩で終日、活動をすることになった。8時45に集合した時は厳しい陽射しに照らされて、本当に今日一日大丈夫だろうかと思わせるような暑さだった。陽射しは、少しずつ和らいできたものの、20人がこの狭い岩場で、本当に活動できるのだろうかという危惧もあった。 参加者を二班に分けて、場所も分けて午前中の活動を始めることにした。二班に分けて正解だった。意外と練習を始めると、時間はすぐに過ぎて昼になってしまった。好きなこと、楽しいことをしている時は時間の過ぎるのは、早いものだ。 午後からは、整備(除草)活動に取り組んだ。人数が多い分、効果は絶大だった。今まで残っていた雑草も、見事に刈り取られていった。終わってみれば14:30。最後は、参加者全員で集会をして早々に下山することができた。今は、本当に整備が行き届き、一昔前、あれだけ生い茂っていた雑草や苔が、噓のように少なくなって、いつ行っても岩登りの練習ができる状態になっていると胸を張って、言える。 この様に、まとまった整備活動と練習の機会が、この後も持てたのが嬉しい限りである。

10月24日 (土) 研修会「安全登山楽習会」 13名参加
 4月下旬に、整備活動を始めたと思ったら、もう秋の訪れを感じる季節になってしまった。あの夏の酷暑が噓のようだ。9月初めに超大型台風が来たのでさえ忘れてしまいそうである。
 岩場のボルト打ちの整備も終わり、国見岩に打ったボルトは30本は超えている。最初は、フリークライミング協会に頼んで、打ってもらう話をしていたのが懐かしく感じる。 土木の専門家がいるとドリルの電動工具が使えて、やってみると作業も簡単だった。
 整備が終わったゲレンデで、今年は「女性クライミング初心者」対象の講習会をすることにした。毎年していた安全登山楽習会を、今回はクライミングに特化した形で、やってみることにした。講師は、私の長年の友人である「徳永哲哉」ガイド夫妻。 彼らにとっても初めての国見岩で、クライミング初心者の指導をお願いすることにした。事前の下見に来てもらい、こちらの女性担当者との打ち合わせをしてもらった。
 そして、当日。準備万端整った国見岩で、クライミング講習会を盛況の内に開催することができた。国見岩で、これだけ多くの参加者が集まって、楽しくクライミングを学べるようになったのも、多くの人の熱意と取り組みがあったからだと思っている。午後からは、ビジターセンターで徳永哲哉ガイドの講演を楽しく聴いて、秋の一日が過ぎた。

11月 29日(日)
国見岩周辺環境整備記念安全登山楽習会

 11月下旬の寒い週末だったが、会場の国見岩は、ピンと緊張感が漲っていた。北九州地区にある幾つもの山の会の仲間が集まって、半年以上に渡って実施してきた、国見岩周辺 環境整備活動の総仕上げに、全国連盟から川嶋事務局長夫妻を招いて、現場視察とクライミング講習会が開催できるのだ。 現場には、すでに10人以上の仲間が最後の準備に追われていた。
 全員が集合した後、装備を慌ただしく身に着けて、移動を始めた。最初はバランス岩でアップして、難しいルートを試す予定だったのが、いきなり10a程度のルートから始めることになった。時おり、冷たい風が吹く中、そして、多くの参加者が見守る中、 奥様の大和田氏がトップロープで無難に登り切った。寒い中、手指も動かしづらい状況にもかかわらず良かったと思った。 それで終わってしまうかと思ったが、参加者の中の一人の女性の指導に当たってくれた。なかなか誰しもが簡単に登れるルートではないが、時間をかけて本人の気持ちに寄り添うようにしてアドヴァイスをし続けた。 おかげで、彼女は途中であきらめることなく終了点に着くことができた。初めての場所で、初心者にも優しく根気強く励まし続けてくれた大和田氏の人柄を窺い知ることができた思いだ。 その間の確保は、ご主人の川嶋氏が岩陰にもたれかかって、微動だにすることもなくしてくれていた。
 あっと言う間に、初日の午前中も終わり、午後の講演会も盛況だった。コロナ禍で全ての活動が停滞している最中、30名の参加者を数えることができた。荒木会長の挨拶の後、さっそく川嶋氏の講演が始まった。最近の山岳遭難の実態をデータで紹介しながら、なおかつ具体的な事例の紹介もあった。何度聞いても、身につまされるばかりだ。3年ほど前の3月に那須の雪山で起こった、高校生の雪崩遭難の話は、九州に住む我々には、本当に貴重な教訓だった。聞いて良かった。そして、雪崩には絶対に遭遇したくないものだとづくづく思ってしまった。
 1日目だけの要約になってしまった感があるが、2日間を通して、本当に充実した研修会だったと私を含め、参加者の多くが思っている。

活動は、受け継がれなくてはいけない
 この半年以上に渡る活動を振り返ってみる時に、私としては、望外の成果だったのでは、と思っている。2021年もこの整備活動を、地道に継続できればと願っている。
 11月28、29日の2日間は、川嶋事務局長、大和田英子氏に来北してもらい、寒い中ではあったが国見岩での講習とビジターセンターでの講演をしてもらった。これが半年以上に渡る整備活動の「総仕上げの取り組み」だった。そのために、仲間が集まって、事前の準備や当日の行動を打ち合わせて、本番を迎えることになった。2日間の参加者は、総数80名を超えた。
 技術指導中、講演をする最中に、なぜ山に行くのか、なぜこの時、それをするのか? 色々の技術や理論がある中、その理由がわかってないと駄目だ。ただなんとはなくではなく、きちんと理解して人に教えられるようにならないといけない。 現実は、確かにボランティアリーダーが大勢を占めるのは間違いなく、そのような状況の中で、我々がすべきこと、我々が山に向かっていく以上、常になぜという疑問を抱いていないといけないということを、川嶋事務局長からしっかり考えさせられてしまった。 今後に、是非役立てていきたいと思っている。 (文・溝尾)